生き残った少女と戦闘兵器 第2話

 俺は、サヴァイヴォーとの雑談を楽しいんだ後は、自室に戻った。
 そこから、リュックから女の子が出てきた。
 俺のしょっているリュックから出てきたのは・・・。

「ふわあ、よく寝たのでござるわ。

おはようでござる」

 ござる口調で話す、俺の従妹のロードゥだ。
 赤い髪に、赤い瞳を持ち、小柄な女の子だ。
 年齢は13歳で、パロラーチョの次に幼い。
 よく異次元空間である、俺のリュックの中に入り、寝ていることが多い。

「もう、夕方だが?」

「あたいの夕方は、君達でいう朝なのでござるわよ」

「というと、夜は?」

「昼という感覚でござるわ」

 ロードゥは、人間とゾンビと吸血鬼のサードと言われる者で、日光に弱い。
 そして、人間である父親と、吸血鬼である母親を2歳の頃に亡くしていて、親の記憶はない。
 もう一人、ゾンビである父親は生きているかもしれないものの、あいつは子供に興味もないし、子育てという概念すらもない。
 父親が二人で、母親が一人ということがあるのかと言うと、人間ならありえない。
 だけど、人外なら、ハーフどころか、3つの血を持つサードの子供を作ることができたりする。

「あたい、お腹すいたのでござるわ。

赤いワインはないでござるか?」

「ない!」

 吸血鬼は、13歳から赤いワインとか、ぶどうワインを飲んだりするらしいけど、この子は生粋ではない。
 それに、人間でのルールは、子供にワインなんて与えない。

「お腹すいた時は、どうするでござるか?

ちなみに、野菜は食べないでござるわよ」

「野菜も食べないと、体に悪いぞ」

 ロードゥは、13歳のわりには、性格や容姿も幼い。
 まるで、小学生みたいだ。
 そんな彼女に、俺は保護者のような態度で接してしまう。

「やだでござる!

お肉、お魚、ワイン!

お肉はお肉でも、ハンバーグがいいのでござるわ!」

 なんていう偏食家だ。

「それでいて、スイーツが食べたいとか言わないだろうな?」

「もちろんでござるわ!

パフェ!

パフェは、最高のご褒美なのでござるわよ!」

「どんなパフェがいいんだ・・・?」

「そんなものは、決まっているのでござるわ!

いちごパフェ!!」

「アマーさんの喫茶店で作るパフェのことか?」

 アマーさんという、俺の知り合いがバイトしている喫茶店があるのだが、このいちごスイーツがおいしいと評判なのだ。

 いちご以外のスイーツが出ることはなく、
 いちごプリン、
 いちごパフェ、
 いちごケーキ、
 いちごチョコ、
 いちごクッキー
 など他にもいちご関係はあるものの、それだけで人気を継続できる有名な場所だ。

 ロードゥは、アマーさんが作るいちごパフェが大のお気に入り。
 あそこは24時間営業で、アマーさんは夕方から早朝までバイトをしている。
 
「また、そこに行きたいのか?」

「行きたいのでござる。
行きたいのでござる」

 そんなロードゥの瞳は、きらきらと輝いていた。

「ロードゥは、お子ちゃまだなあ」

 ロードゥは、ムスッとした感じで怒ったけれど、そこもかわいいと感じてしまう。

「お子ちゃまじゃないってば。

中学生なのでござるわ」

「やっていることは、小学生の時と変わってないって」

「あたいの身長は、全然伸びないでござるわ。

身長を学校で測った時も、クラスで一番小さかったし」

 ロードゥは、夕方からの活動しかできないので、夜間中学に通っている。
 保育園の時から、ずっと夜間だ。
 夜間保育園、夜間幼稚園、夜間小学校、夜間中学校。
 多分、高校も夜間になるだろう。
 何せ、日光を浴びることができないからな。

 日光を浴びるとどうなるかは、今のところは秘密だ。

「今から、準備するぞ。

アマーさんのスイーツ食べたら、スーパーで買い出しに行くよ」

「待ってなのでござる。

その前に、うさぎのぬいぐるみを持っていくでござるわね」

「え?

まだ、ぬいぐるみを持ち歩くの?」

 俺の部屋に、赤いうさぎのぬいぐるみが置いてあるのだが、あれがロードゥのお気に入りだ。
 あれがないと、夜は寝れないからな。

「そうなのでござる」

「去年までは小学生なのでと説明できたけれど、今年は無理があるぞ?」

 今どき、うさぎのぬいぐるみを持ち歩く中学生なんているか?

「いいのでござる。

あれは、あたいの大切な宝物なのでござるのよ」

「変な目で、見られなきゃいいけど・・・」

 体は年齢とともに、成長していく。
 だけど、あいつの精神のお子ちゃまはいつになったら抜けるんだか・・・。

 ゾンビとか、吸血鬼の子供はどうなのかわからないけれど、そんなに甘い物ばかり食べて大丈夫なのかと心配になることさえもある。

「それに、関係のない話なんだが、学校にも持ってきてないか・・・?」

 いくら、ロードゥでもさすがにそんなことはしないだろうと内心は思っている。
 だけど、急に不安になったから確認してみた。

「持ってきてるでござるわ」

 笑顔で返事をされた。

 俺は、どんな反応をすればいいんだ?
 これははっきり注意してなくてはならないことだけど、なんて指摘すればいいのか思いつかない。

「せ、先生に没収とか・・・されないのか・・・?」

 ロードゥが、考えこみながら答えた。

「うーん、夜間の先生だからなあ、白い目で見ることはあるでござるわね。

ござるけど、特には何も言われないでござるな!」

 そうか。
 つまりは、自己責任ってことか。
 なんとなく、そんな感じはした。

 夜間学校は普通の学校とは異なり、全てが自己判断。
 つまりは、放任主義な世界と同じということだ。

 先生どころか、同じ夜間学校に通う生徒たちも不思議に思っていることだろう。
 この子は言われなきゃ、まわりにどう思われているとか関係なかったりするのかな・・・?