コヤンイが、やってきた。
「しばらく会って・・・なかったのですね」
「そう・・・・」
恋人なのに、しらばく会っていないというか、会う頻度が徐々に減ってきている。
なぜか、不思議と不安にならないし、会いたいという気持ちすら薄れてきている。
「うち達、幼馴染なのですよね?」
「急に、どうしてそんなことを聞くんだ?」
「さあ、なんとなくなのです」
「コヤンイらしくないな」
コヤンイの様子が、いつもと変だった。
会いたくてしょうがないというように甘えてこないし、冷めたような感じだった。
コヤンイとは幼馴染かつ、恋人だけど、長くいてもわからないことばかりだった。
コヤンイと一緒にいる時間は減っていくのに、メイド三人と一緒にいる時間は長くなってきた。
それでも、コヤンイは嫉妬する様子がない。
俺も、コヤンイとどう接していけばいいのかわからないし、話題も見つからない。
最初は毎日がデートに行きたくてしょうがなかったけど、今は月に一回行くか行かないかくらいだった。
仕方ないから、ペットであるアズキと、仕事がなくて暇してそうなメイドのシェーモと遊ぶことにした。
「あたしを頼ってくれるのですか?」
「頼るわけじゃない。
ただ、暇つぶしをするだけだ」
コヤンイといるより、メイド三人といた方が楽なんて、言えないしな。
コヤンイとは、幼馴染のはずだけど、幼馴染じゃない気がする。
幼馴染としての記憶がないし、人間世界にコヤンイなんていなかった気がする。
だけど、付き合っていながら知らないなんて、言えない。
「シェーモだけに言いたいことがあるんだけど、いいか?」
「なんでも、申しつけくださいなのです」
「人間世界に帰りたい」
「急に、どうしたのですか?」
「最近は、違和感があって、真実を確かめるために帰るだけだ。
すぐに、こちらの世界にも戻ってくる」
「それは、危険なのです」
「だから、シェーモにもついてきてほしいんだ。
ダメか?」
「だめじゃないけど、あたしでいいのですか?」
「シェーモじゃなきゃ、だめなんだ」
メイドの姉二人は、お城には絶対的に必要なので、ここを抜けての仕事なんてお願いできない。
「はいなのです。
一緒に行きましょうなのです」
シェーモ、アズキ、三毛猫ボール、俺とで人間世界に向かう。
ここで、少しずつ人間世界の記憶が蘇ってきた。
俺の世界は、荒らされていた。
ここが、僕の故郷・・・・。
「ここは、本当にガット様の故郷なのですか?」
「記憶の通りだと、間違いない。
これで、全部思い出して、これからはまた、目的を持って旅をしようと思ってる」