私立フラゴラ学園〜私だけの運命の王子様〜プロローグ

 私は、義理の兄が受け入れられなかった。
 シェンベイさんと、同じ学園だなんて。
 女子の妬みなんて、面倒くさいってわかってる。

 だから、シェンベイさんと他人のふりをする。

「きゃー、シェンベイ様」
「今日も、イケメンです」
 女子生徒たちは、シェンベイさんのところに集まってくる。
 私はそんな様子を見て、馬鹿馬鹿しいと思った。

 女子なんて、イケメンだとか高身長とか、お金持ちというだけで群がる。
 そして、一緒にいる女子たちは、みんなライバル。

 私は、シェンベイさんを恋愛対象として意識したことはないし、ただのナルシストぐらいにしか思っていない。

 私は好きになるとしたら、内面で選びたいな。
 私の王子様は、そんな人であってほしい。
 外見や身分で選んだら失敗することくらい、母を見ればわかる。

「タルちゃーん、こんなところにいたの?」

「うん、いたよ」

「反応そっけない。
これだから、男に相手にされないんじゃないの?」

「されなくていい。
モテたいわけじゃないし」

 パラブロータスだ。
 私は、彼女が苦手だけど、噂好きのパラブロータスのことだから、表面上の付き合いだけでもしてる。

 避けられたとか、挨拶を無視しただけでも噂を流して、一方的な加害者にされる。

「パラブロータス、おひさ〜」
 愛想よく、親友に見えるように振る舞う。

「ん、もう、タルちゃん。
パラちゃんでもいいのにみっ。
うちら、親友っしょ?」

「知らないよ、そんなこと」と言いたいのを、ぐっとこらえた。

「そうだったね・・・、パラちゃん」

「うちは、タルちゃんのいちごのヘアピンほしいなあ」

「あ、これ?」

 私は右の前髪の方に赤のいちごのヘアピン、左の前髪にはピンクのいちごのヘアピンをつけていた。

「ほ・し・い?」

 忘れた。
 こいつは、たかる女だってこと。

「あははは、無理・・・」

「親友でしょうー?」

「これは、バイトを頑張って・・・」

「ありがとう」

 断ろうとしたところに、パラブロータスはピンクのいちごのヘアピンを持って行ってしまった。

「返して!」

「え?」

「これは、私の!」

「うちのだよ」

「どうゆうこと?」

「うちの、ヘアピン。
親友なら、奪わないで」

 どうゆうこと?
 明らかに私の物だった。
 いつから、パラブロータスの物になったの?

 私はいちごのヘアピンをとられて、落ち込んでいた。
 落ち込んでも、どうしようもないってわかっているけど、私の心はいちごのようにメンタルが弱い。

 

 いちごのように弱く、そして甘い。
 ヘアピンをとられたぐらいでって思われるかもしれないけど、私にとってはお気に入りで、大事な宝物。
 パラブロータスなんかに、勝てるわけない。

 私は目に涙を浮かべる。
 私の涙の粒は、まさにいちごのようだ。
 今は、体育館倉庫の裏にいるし、誰も見てない。
 ワンワンと子犬のように泣かなければ、大丈夫だ。

「おーい」

 後を振り返ると、見知らぬイケメンかつ、高身長の男の子がいた。

「いつの間に!?」

「誰かと思ったら、チビか」

「チビじゃないもん。
身長だって、伸びてる」

 身長151、5センチしかないけど、それでも152センチ伸びることもある。
 この学年では、私より低い人はいないみたいだけど・・・。

「背の順で、目立ってた」

「あれは、目立ってたの。
私の可愛さを学園でアピールしたくて」

「チビなのを?」

「この学園にいるのは、中学生もいるの。
小学校もあれば、幼稚園もある。
私はその中でも、小さいんじゃないの」

「嘘。
チビって認めれば、可愛いのに」

 私は、そこで顔を真っ赤にして怒った。

「余計なお世話だし!」

 

「弱いなら、無理するな。
そして、強がるな。
弱音を吐いてもいい。
あの時のように、辛くなるだけだ・・・」

 あの時のように・・・?
 それって、どうゆう意味だろう?

「君は?
君は、誰なの?
同じクラスじゃないよね?」

 私の学園は5クラスあるし、私は1年5組のために、他のクラスの顔や名前まで知らなかったりする。

「暴走族の彼女になるなよ。
他の男の物になったら、許さないから」

「言ってること、わかんないっ。
私、はっきり言ってくれないと、何もわかれない・・・」

「じゃあな。
また、すれ違ったら声をかけるから」

 彼はその場を立ち去る時に「お気に入りのいちごのヘアピン、返してもらうように説得しとくよ」と振り返り、姿を消した。