この時に終わりがむかえるまで愛してる プロローグ

 私は、佐藤《さとう》おわり。
 広いお屋敷に住んでいるから、普通に歩けない私は車椅子で生活している。

 だけど、従兄の佐藤《さとう》おわる君が、いろいろとお世話してくれてる。
 だから、すっごく困るってことはないかも。
 
「何か困ったことがあったら、いつでもこのベルで呼んでね」

 私の部屋のベッドの近くに、ベルが置いてあって、何か用がある時は、おわる君を呼んでいる。

「わかってるって。

それは、何回も聞いたわよ」

「僕がお世話してあげないと、いけないところがあるから、心配なんだよ」

「ただ車椅子に乗っているだけで、持病はあるかもしれないけれど、体が病弱とかそんなんじゃないし、大丈夫よ。

おわる君が、実際に足の代わりになってくれて、すごっく助かってるわ。

いつも、ありがとね」

 おわる君は一瞬、照れたように見えたけれど、すぐに真剣な表情に変えた。

「持病と病弱、どんな違いがあるのさ?

とにかく、身の回りのことは僕がサポートしてあげるから、無理なことはしないようにな」

「また、同じこと言ってる」

 私は、にこりと笑った。

「茶化すなって」

 こうして、おわる君は扉を閉めた。

 おわる君をからかうことは、どうしてだか楽しい。

 さて、お風呂にしようかな?
 本でも読もうかな?

 トイレとかって、言っておいたほうがいい?

 私の部屋には、なぜかお風呂もあるし、トイレもある。
 しかも、手すり付き。

 多分、これは誰かが私のために設置してくれたんだと思う。
 もしかしたら、おわる君がやってくれたりして。
 そんなわけないか。

 私が乗っている車椅子には、いくつかボタンがあって、前へ進んだり、後ろにさがったり、回ったりできる電池式の機能もついている。
 もちろん、自分で車椅子を押すこともできるけれど、ボタンを押した方が楽だ。

 お菓子でも食べようかな?
 冷蔵庫の中を開けてみても、何もない。

 ここで、ベルを鳴らす。

 すぐに、おわる君が扉を開けて、駆けつけてくれた。

「どうしたの?」

「冷蔵庫の中に、何も入っていないわ」

「何もいれないでおいた」

「どうして?」

「お医者さんから、糖分や塩分が多く含んだものを与えるなって言われたから。

その代わり、お茶とか入れてある」

「お茶じゃあ、お菓子の代わりにならないわよ」

「君は学校とか行かないで、通信とか院内学級の状態なんだし、友達も、食生活の指導を受けている。

おわりちゃんなんて、まだいい方だよ」

 私は普通に学校に通えないために、病院内で授業を受けるか、学校から通信での課題を受けている。
 最後に、投稿しての学校を通ったのは、いつぐらいだろうか?

 院内学級でできた友達は何かしろの病気や障害を持っていて、車椅子もあるけれど、ベッドの上で勉強をする子もいる。

 私はその中でも病気が軽い方らしく、車椅子での不便を除けば、一日中、授業を受けられる。

「おわる君は、普通に学校に行って、何気ない暮らしを遅れるから気にならないかもしれないけど、その言葉は傷つくな」

 病気や障害に、いい方とか悪い方とか分けてほしくない。
 同じように辛いことに変わりはないんだから。

「ごめん」

「病院の先生から、他に何か言われた?」

「ハンバーグとかも、塩分を控えめにすれば食べていいってさ」

「おいしくないじゃん!」

 私の大好きなハンバーグまで、お医者さんに制限されるとか・・・・。

「どちらにしても、お医者さんに悪意はなくて、全部君のためを思ってだと思うよ」

「他には?」

「心電図もやるって」

「今年やったわよね?」

「院内学級は、何回もあるみたいだね」

「となると、肺の検査もまたやる感じなの?」

「その通り」

「学校とか休んでいい?」

「それはね、お医者さんとの許可が必要だってさ」

「そうなると、私は風邪とかひかない限りは、毎毎日出席で、早退も許されないってことになるわよね?」

 院内学級の先生は、他の子にはそこまで勉強なんて押しつけないけれど、私だけ課題が多いし、苦手な教科もやらされる。

「明日、国語とかあるからやなの!」

 国語は、他の教科の中でも、特に嫌い。

「体育とかないからいいのでは?

僕なんて、体育の先生が厳しいから、体育が特に嫌いなんだ」

「そうだけども、体育とかある方がまだいいわよ。

私は、院内学級に転校してから、体育とかやったことないし、それに・・・・」

「それに?」

「院内学級の給食は、全然おいしくないの。

塩分とか控えめにされてるから、味が全然しない」

 普通に学校行っている子は、おいしい給食を毎日食べているんだろうな。

「学校とか嫌いなの?」

「どっちなんだろう?

学校の友達はいい人たちだけど、毎日来ているわけじゃないし、転校してからは、前の方がよかったって思うところもたくさんあるわ。

それと同じように、宿題とかの量や学校にいる時間も短くなって、今の方がいいというところもあるわね。

あっ、そうそう。

前の学校は部活が強制だったけれど、今の学校は部活ってものがないところが、嬉しいところね」

「君、高校とかどうするの?

このまま、何も改善しなければ、院内学級のままだし、うまくいけば、僕と同じ志望校に行けることも期待できなくはない」

「期待しないでほしいわ。

高校行けないことだって、考えられるもの」